小幡績『ネット株の心理学』MYCOM新書

二匹目のドジョウで1億円?!

$ゆっきーのエッセイブログ

 株というのが好きな方も嫌いな方も、素朴な疑問として「じゃあ、そういう分割しそうな株式を狙っておいたら、(自分が投資するかどうかは別にして)今でも1億円手に入れるくらいのチャンスがあるのかな」と一瞬思うと思います。

 結論から言うと、ライブドアの時の成功体験をそのままやっても今はもうダメのようです。

 コレを検討してみましょう。

検討しますと、「やっぱりそんなうまい話はない」という常識や社会道徳に合致した結論も引き出せますし、一方で「じゃあ今度はそれをさらにすり抜ける裏技テクニックはないのか」という論点探しにも役に立つはずです。

 具体的には、前回書きましたこれを検討すればよいようです。

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「分割バブルは、バブルを分析する格好の素材です。なぜなら、それは企業収益とは何の関係もなく、2ヶ月で必ず終わるバブルであることを誰もがわかっていたからです」

 なんで2ヶ月なのかなと思った方が多いと思います。当然あたしもなんで二ヶ月というのがキーになるの?と思いました。

 言われて見れば理由は単純でして、株式分割とは親の株に対して分割された子供の株がぶら下がるということで、今回は1株の親に99の子供ができたという感じになるのです。そして重要なのは、こどもが生まれるとわかって十月十日で人間の子供がオギャーとこの世に生まれいづる様に、株式にも生まれ出るまでにそれなりの時間がかかる(後述しますがかかった)のです。

 それが二ヶ月というわけです。

 単純に株券を印刷する時間とか手続き上の手間暇です。

このお母さんのお腹の中のライムラグがどうやって分割バブルのからくりに結びつくかなのですが、ここでも需要と供給の一致点においてのみ価格が成立する(取引が現実のものとして実際に行われる)という経済学の大原則が当てはまります。

 言い換えると、流動性がゼロの流動性債権ですよね。

 つまり、権利としては100倍の数の株式を持つ人が登場し、権利の行使ができるのはその二ヶ月後であることも自明なので、この2ヶ月間は出まわることのない(言い換えれば手元にないので売ることができない)幻の株が存在することになります。

 二ヶ月後に実際に株券が株主の手元に届き、それを普通に売ってしまえるようになると分割がもし100倍でその間に企業価値の変動が全くなかったとするならば、理論値では株の価値はそのまんま薄くなった1/100になります。

 だから瞬間的に株式が発行されていれば株式をどれだけ分割しても、瞬間的に価値が薄まるので市場に錬金術的熱狂は生じない。

 なーる・・・。ですよね・・・。うーむ。今回読書してデイトレーダーの人が何を考えて毎日熱狂しているのかわかってきたようにも思えます。ちゃんといろんな理屈があって儲かったり損したりで、これはたしかに宝くじなんかとはぜんぜん違う・・・。

 ということは・・・なんで今ダメかという理由も明確にあるわけで・・・

 株券は昔は紙に刷っていたのですが、今は何でもコンピュータの時代。

 株券も電子化されてその通知もネットで行われて、この2ヶ月というタイムラグが消滅しました。

 前回こう書きましたが、株券が通常の通貨のようになったわけです。

通貨の供給の場合には、例えばドルで円を買うということはあるわけですけど、基本的に日本国内で暮らしている私たちは、一日の始まりに日本円を買わないと通勤途中にキオスクで日経新聞も買えないかというとそんなことはありません。

ところが、ライブドア株に限らず株式の場合には証券のひと株当たりの価値が下がったとしてもその下がった株式を買いたいという人が殺到している限り、市場に株式が出回りません。

 な〜る。

 ということであのパターンの錬金術はもうない。

 やれやれ、あたりまえだよなと頷いた人も、あ〜遅かったがっかりした人もこれが現状です。

では、こういう投機的なバブルはいろんな制度が改善されて消滅していくのかというと・・・

 どうもそうじゃないみたい

次回残してある以下を検討してみます。

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ライブドアマーケティングの株式100分割を素材に、バブルでの投資家行動と投資家心理を緻密に分析してみましょう。そこでは、投資家心理をうまく分析したものが、ゲームに勝ち残れたことが明らかになります」『ネット株の心理学』p93