門倉貴史『日本の地下経済―脱税・賄賂・売春・麻薬 』講談社プラスアルファ新書

$ゆっきーのエッセイブログ

 いかにもアンダーグラウンドな題名の本ですが、著者は浜銀(横浜銀行)総合研究所調査部研究員として主にマクロ経済の分析を担当するシンクタンクの人です。

 冒頭に澁澤龍彦訳のマルキ・ド・サド悪徳の栄え』のサド侯爵夫人の独白が引用してあるのですが、本書の特徴は、マクロ経済分析の専門家の手堅さと、文学的イメージの両立と言う所にあると思います。

 例えば、著者はこんな例を上げてアングラマネーのイメージを喚起します。

会社で部長のあなたは、商用で大阪に出張することになった。商談が無事成立し、気が緩んだあなたは、部下と共に近くのキャバクラに行き、さんざん遊んだ挙句、そのお金を交際費として会社の経費で落とした。

⇒アングラマネーを作り出しました。

妻の不貞行為を知って逆上したあなたは、プロの殺し屋を雇って妻を殺害することを計画した。殺し屋はうまく仕事を成し遂げ、あなたの妻をこの世から抹殺した。あなたは成功報酬として殺し屋に1000円支払った。

⇒アングラマネーを作り出しました。

あなたが渋谷のセンター街を歩いていると、見知らぬ女子高生が「援助交際」をしてくれないかと声をかけてきた。いけないと思いながらも、カワイイ子だったのでついつい誘いに乗って道玄坂のラブホテルに入ってしまった。そしてホテルを出る時、あなたはその女子高生に七万円を支払った。

⇒アングラマネーを作り出しました。

一方、下記の例はアングラマネーに見えてアングラマネーには含まれないようです。

あなたは、自宅の庭でこっそり大麻を栽培し、それを自分で乱用し、日頃のストレスを解消している。

⇒自分でやっているだけではカウントされません

あなたは、駅の構内でうずくまっているホームレスの老人を気の毒に思い、数千円を老人のポケットに入れてやった

⇒所有権が移転しただけでカウントされません

あなたはある業者から海外有名ブランドのバッグの贋物を大量購入し、それを本物と偽って自分の店で販売、巨額の利益を挙げた。

⇒知的財産権の侵害にあたりますがカウントされません


ね、面白い本です('-^*)/

一言で言いますと、悪いことをしたときに生じるお金がすべてアングラマネーとはカウントされない!ということです。

ポイントはどうやら裏のお金と表のお金の価値体系が何らかの形で交換されるときにあるようですね。
下の例でいいますと、ホームレスというアングラの住人にお金は渡るわけですけど、所有者がアングラであっても経済行為としてアングラマネーではないので、相手が暴力団であっても同じですね。もっとも数千円を思わずあげたくなるかわいそうな暴力団員がいたとしてですけど(笑)。

 あ、まてよB級ヤクザ映画でなさけないチンピラに貢いじゃう、男のことを「あんた」自分を「あたい」と言う日本語を使う女の人はいそうですね・・・(ーー)

 たぶんこの人の貢という行為はアングラにならないでしょうし、男のためにキャバレーで働くこともアングラではないでしょうが、男が急に金がいるんだと思いつめた顔をしたときに、普段は断っていた蛇のように嫌な男とホテルに行ってしまい、なぜか50万円もらってしまってから男に貢ぐという場合にはアングラマネーが生み出されたことになるのでしょうかね・・・

だから多分みかじめ料はアングラ。違法ですが双方の同意による経済行為ですのでアングラになる。消極的な暗殺依頼(消極的に暴力を抑止するという意味で)とみかじめ料を考えることができそうなので、これはアングラかな。

つまり、経済行為として

が交錯するときに、アングラマネーが誕生すると言ってよいと思います。

では〜(^^)

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