山崎裕司『談合は本当に悪いのか』洋泉社
日本は市場主義の国だとダレが言った?!
もしかすると「談合は本当に悪いのか」という題名に不快感を持つ人がいるかも。というかいると思います。
ですのであらかじめ筆者のためにありそうな誤解を解いておきますと、この本は「談合はやっぱり正しいのだ!」という本ではありません。
むしろ、談合を必要としてしまうシステムって一体何だんだ、表面的に談合バッシングをして談合をなくそうとしてもそれは根本的な解決にはならないのじゃないか、という真摯な問題意識に全編が抜かれています。
筆者の立場は建設コンサルタント。建設業という業種が、国土の発展に寄与し、市民の幸せに直結すると信じて疑わない熱血漢(文章からすると多分)で、読んでいると読者もなかなか熱くなってきます(笑)。
その著者の根幹にある現状認識がこれです。
「日本を市場主義の国だと勘違いするから、談合が異常に見える。が、「日本の本質は市場経済ではなく戦時統制の計画経済なのだ」と深く理解した瞬間に、談合は当たり前のものになる。むしろ「談合問題」を短慮に論ずる大新聞・マスコミの異常に気付かされる」
『談合は本当に悪いのか』文庫版のためのまえがき
日本は世界で最も成功した社会主義の国(共産主義の国)である、という命題はそのセンセーショナルな内容にもかかわらず人口に膾炙しています。
つまり、私たちはどっかそう思ってる所が確かにある。
その印象は多分正しいとどっかで思っている。
著者はこの点をもっと突っ込んで、その社会主義的なところを「1940年体制」に求めます。
55体制はは崩壊して曲がりなりにも(笑)日本は保守勢力の二大政党政治になっていますが、戦後の呪縛は実はまだ続いており、筆者によるとそれこそがこの、談合問題やら官僚支配の弊害やらを産んできた戦争に備えるための1940年体制であるということで、これを理解しない限り日本の異常な状態、偽装国家状態も見えてこない、というわけです。
じつはこの本にたどり着いたのは、あたしの趣味の一つである満州国の歴史を調べることだったのです。
どういうつながりがあるかといいますと、また脱線しますが(^^;かいつまんでいうと以下のような感じです。
あたしは個人的には日本の戦後政治を決定した(グランドデザインした)のは田中角栄さんではなくて岸信介さんであると思うのでありますが、その岸さんが作ったのが、満州国をお手本にした官僚統制による国家設計であった。
そしてその満州国の建設理念は日本の1940年体制をより純度の高いものにして、いろんなしがらみのない(というかそれは、かの地の民族の犠牲に基づいているわけでその認識自体大問題ですので、正しくはしがらみを無視しやすいというべきだとは思いますが)国家でそれを実践するという、まことに壮大な超がつく優秀な官僚の目論見であった。
日本の1940年体制も満州国の理念も戦争終結で崩壊したけれど、それを再び復活させたのが、日本を逆コースに走らせ、経済発展という力によって共産主義の防波堤としようとしたあの超大国だったというのが、1940年体制論者の一致した意見のようです。
この視点で談合問題を考えているのが、この『談合は本当に悪いのか』という本なのでした。
というわけで、話がでかくなっちゃいましたが、この視点でさらにいろいろ考えてみようと思います!
もはや戦後ではない?
でも本当にそうなのでしょうか?