野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』東洋経済

$ゆっきーのエッセイブログ

日本と独はなぜか似ている

 ヒトラーの経済政策が日本やアメリカよりも成功したケインズ理論の適用である、と言い切ってしまっている『ヒトラーとケインズ』に首肯する前に、独と日本の共通点をもう少し探求してみましょう!上記の本からまとめてみます。

・後発工業国であるために重化学工業の比重が高い

・間接金融体制が製造業の設備投資に対する資金供給を担った

・経済全体の中で製造業の比率が高いため、中国が事実上の鎖国を続けて工業化しなかった70年代までは、世界経済の中で高い地位を占めることができた
(90年代になって日独のパフォーマンスが低下したのは中国が工業化したから)

・貿易黒字を蓄積した結果、多額の対外純資産を現在でも保有している
(この点アメリカやイギリスは対外的純資産を沢山保有しているどころかマイナス)

・企業の意思決定に労働者が参加するのは階級意識がドイツ日本とも低いから

・西ドイツは国際社会での低位置に甘んじて国際政治でイニシアティブを取ろうとしなかった点も、英仏と大きく相違し、そして我々日本とは似ている

・第二次世界大戦で大きな被害を被っている

・敗戦国なので軍の社会的な地位は日本と同じく高くない。

しかし著者によれば(『1940年体制』の著者によればです)、なんといっても最大の共通点はこれです!

ズバリ!

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■戦後の西ドイツも戦時体制を継続した

でしょう!!!

衝撃の事実を引用してみます。

バイエルンでは、51年に判事・検事の94%、大蔵省職員の77%、州農業省公務員の60%が元ナチス党員だった。52年時点で、外務省職員の3人に一人がかつてのナチ党所属だった。外交団では、43%が元SS(ナチ親衛隊)、さらに17%がかつてSD(国家保安本部)、あるいはゲシュタポ(国家秘密警察)に勤めていた。」

野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』P68

これだけではありません。

「更に驚くべきは、一般のドイツ人の考え方だ。戦後のドイツ人の多数が「ナチズムのアイディアは良かったが、方法が悪かった」と考えていたこと、52年時点で西ドイツ人の25%がヒトラーについて「好意的見解」を持っていたことをジャット(ジャット『ヨーロッパの戦後史』みずず書房 ゆっきー注釈)は紹介している」  同書同ページ


「これを見れば、戦後西ドイツも戦時体制の継続の中で経済発展を遂げた、ということになるだろう。「戦争責任の取り方は日本とドイツで全く違う。ドイツはナチを完全否定したが、日本はあいまい」という丸山真男の考えに、私も知らぬ間に(そして検証もせずに)染まっていたことになる」

野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』P69


 うーむ。

 丸山史観は日本人の懺悔の印みたいになってるところもありますから、検証もせずにそう思っている人は野口悠紀雄さんだけでないような気がします。


 では引き続き本書を参考に考察を進めます!