野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』東洋経済

$ゆっきーのエッセイブログ

石油ショック乗り越えでは終身雇用も大事だったが
         それ以上に生産性の問題が本質的だった

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ズバリ!本書から引用してみましょう!

「西ドイツでも日本でも、戦災によって戦前からの工場の多くが失われた。しかしそのために、新しい工場を作ることができた。技術が大きく変化した世界では、生産性向上のために、その方が返って望ましかったのだ。
 それに対して、イギリスやアメリカの工場は戦災を免れたが、そのことが戦前の古い技術体系からの脱却に対しては障害になった。しかたって、生産性の向上が日本や西ドイツほどには急速に進まなかった。こうして、誠に皮肉なことに、敗戦国のほうが生産性を向上させることができたのだ」

          野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』P57

 なーる!言われてみればもっともかもしれない。では、ロシア革命によって古い体制をどんどん壊し、かつ、第二次世界大戦に勝利したソビエト連邦はどうだったのでしょうか。

「石油ショックは共産圏の経済に影響を与えなかった。なぜなら石油を自給できたからだ。すでに50年代にソ連は共産圏の需要総量を上回る石油を生産できるようになっており、西側に輸出していた。原油価格上昇で最大の利益を受けた国は、実はソ連だったのである

          『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』P81

おっと!これも言われてみればそういうことになりますよね〜。

野口氏は続けます。

「西側各国が石油諸費の抑制とエネルギー源の多様化に励み、コスト削減を徹底化していた時、共産圏では安価なエネルギーを利用できたため、省エネルギー化も産業合理化も進まなかった
 
                         同書同ページ

 なるほど、これでは西側戦勝国と同じどころか直ぐにそれ以下に生産性は落ちてしまいます。


 しかし日本もオイルショック克服から四半世紀が経ち、今度は、日本がその成功体験がいっぱい詰まった経済システムに引きずられて、IT革命、金融革命に乗り遅れてしまった


 野口氏の言う本質とはこういう時代を貫通する生産性という課題の指摘だったのでした。

 つまり、終身雇用制は石油ショックに役に立ったけどもう使えないから日本の将来は暗い・・・、というのではなくて、あの時頑張れたのは生産性が高かったからであると正しく認識すべきである・・・と。

 そして、捨て去らなければならない終身雇用制への未練は捨てて、なぜ今の日本は生産性が落ちているのか?パソコンが嫌いな古い経営者がIT革命を推進したくなかった(もしくは理解できなかった)のではないか。金融革命は金儲け主義だからということでなんとなく避けて通って、アメリカが失敗したらその失敗原因を詳しく分析することなしに、あ〜やっぱりああいう金の儲け方はだめだよな〜ですましていないか、という問題提起のようです。

 続きます