ホリエモン登場の背景2〜完全無視する完全勝利は可能か?
源義経、ねずみ小僧、東条英機、総会屋、任侠の徒、小沢一郎、ルパン三世
(ーー)
・・・○○えもん?
「敵対的買収という危機感のない経営者にバブルの戦後処理はできない!」
前回こう書きましたが、こうした正論は時に爆発的に受け入れられるときがあると思います。誰かに対して誰もが言いたかったけど口に出来なかった、そんなセリフが高らかに自信を持ってある人物から発せられ、それがあっという間に人口に膾炙していくという過程は、歴史上様々な場面ですでに私達に馴染みの深いものであります。
ですので、冒頭に思わせぶりに(笑)書きました源義経、ねずみ小僧、東条英機、総会屋、任侠の徒、小沢一郎、ルパン三世というのは、その誰かに対してとワンセットにした方がイメージしやすいのだと思います。
源義経と源頼朝
ねずみ小僧と越後屋
東条英機とABCD包囲網の国々
総会屋と巨悪企業経営陣
任侠の徒と治安当局
小沢一郎と保守本流
ルパン三世と・・・
ルパンは誰に対してかな・・・自由を縛る存在全てか?
ねずみ小僧は実はこそ泥ではなくて、権力とつるんだ巨悪商人が蓄財した財産を貧しい庶民に再分配する義賊である。
総会屋は得体のしれない伏魔殿で得体のしれない経営をやっている雲上人に、正しい経済的正義の価値を教える物言う株主なのである。
・・・
そのように考えてみると、○○えもんというキャラは見事にこの構造的ツボにはまってます。
日本人の大好きな判官びいきですが、ホリエモンというキャラの本質は(すくなくともその登場時期においては)この日本人の情緒的機微にまことにフィットするところがあったと言えないでしょうか。
するとここで、佐々木俊尚さんが喝破した本書の言葉が思い起こされます。
「人々がホリエモンを語る姿というのは実のところ、「わが内なるホリエモン」を語ることになっていたのである」
佐々木俊尚『ライブドア資本論』
だれもが、ピカレスクロマンに出てくる悪党を心のなかでたまには待望し、心の底ではそれを許してしまう危うさを持っている。
なぜなのか・・・?
なぜホリエモンは今だに一部で人気があり、無視すればいいものを良識派の人は今だに苛立っているのか・・・?
いいかえればいスタブリッシュ側の人達はなぜ、ホリエモンを完全無視するという完全勝利を手にすることができないのか!?
あなたも
あなたの誰か
を抱えている
からだと思うのであります。
あなたの中にもし、源義経、ねずみ小僧、東条英機、総会屋、任侠の徒、小沢一郎、ルパン三世の敵キャラの誰かがいるとしたら、あなたの中にも「よくぞ言ってくれた」と言ってもらいたい爆弾があるはず。
人には言えない自分だけの正論(これ自体実は不幸なことに明白な言葉の矛盾だ)が自身の心中にあるかぎり、人は悪党に完全勝利することは難しい。
だから、ホリエモンを語ることは自分を語ることである、という佐々木俊尚さんの言葉に、我々は今もってしてなお帰着するのだろうなと思うのであります。
そういう意味で、この不発弾処理は非常に危険です(ーー)。
つづく