真壁昭夫『最強のファイナンス理論 』講談社現代新書


ちと硬い言葉なれどすごく具体的な「効率的市場仮説」という考え方

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 さてと、それでは経済学の理論の入り口をうろうろしてみようと思います。

 この本によりますと、効率的市場仮説という言葉を直感的に理解するには「裁定」という言葉から入るのがよいようです。

「伝統的ファイナンス理論とは、「裁定」の考え方を極限まで押し広げたものである。そして、ここで使う「裁定」とは、ざっくり言って「高いものを売って(それと同等のもので)値段の安いものを買うということである」
真壁昭夫『最強のファイナンス理論 』p33


お!これはズバリ!

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まさに
株の売買そのもの!ではないですか。

これまでのこのブログの流れですと、これにくわえて"”売ることを見越して買えば言うことなし”、となりましょうか。

「例を上げて考えよう。大阪で金の値段が一グラム3,000円のときに、東京では3,100円だったとする。そうすると、大阪で金を買って、それを東京で売れば儲かる。格好をつけた表現をするとこれを「金の裁定取引で利益を得る」という。これはうまい話だ」
真壁昭夫『最強のファイナンス理論 』

 とても日常的にありそうな話ですよね。商売の原点とも言えるのじゃないでしょうか。

「これを、フリーランチと呼ぶ。日本語で言うと”ただ飯”にありつくということになるのだろう」

 おっと(^^;;;

 まあ、そういう言い方もできますかね。

「しかし、みんなが大阪で金を買おうとすれば、結果的に、大阪市場での金の値段は上昇する。一方東京市場では、金を売ろうとする人が多くなるため、金の値段が値下がりするだろう(一物一価の法則)。だから、うまい話は転がっていないことになる」

そらそーですよね。

ここから商売が始まる!

「もし、一物一価が成り立っていなければ、浪速っ子のAさんが金を3,050円で売りたいと思っていても、東京で3,100円で買いたいと思っている江戸っ子のBさんとは取引が成立しないということになる。これは明らかに非効率だ。取引が成立すれば、AさんもBさんも満足なのに、取引ができないためにふたりともハッピーになれない。だから、裁定が行われていない市場は、効率的でないということになる。」

 もし物流の問題ならそこに物流会社のビジネスチャンスがあるとかそういう話になっていきますね。

「経済学では、市場で裁定が十分に行われていることを想定することを、効率的市場仮説(先に、市場が合理的に動いていることを効率的市場仮説と説明したが、合理的に動いていることと、十分な裁定が行われていることは同義と考えてよい。)と呼ぶ」

お!あたし的にはこれでスッキリ頭に入った気がします。

「ところが、現実の世界では、何らかの理由で裁定が十分に行われず、市場に非効率的部分が残る可能性がある。例えば、会社の近くで乾電池を買ったら、地元の駅前ではそれより安く売っていた。「10円損した。くやしいな」、というような経験は誰にでもあるだろう。」引用は全て同書

なるーーー。
早速応用してみました!

これを株式市場に当てはめてみると、市場取引だろうと店頭取引であろうと全部コンピューターで一瞬にして管理してるから、上記の例のような【地理的な】差異というものは株式市場にはない。例えば、ロンドンとニューヨークと東京とでドルや円の値段が違っていてそれが儲けの種になるというのはあるけど、株式市場ではそれはないはず。

あれ?おかしいな?

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だとすると、株式市場は効率的市場仮説を満たしているのか?
そう見えなくもないか・・・。

いや、ちょっとまてよ・・・。

とある上場会社の役員室で決議されたホヤホヤの株式分割決定と、まだそれを知らない市場って、距離的な差があるよな・・・。あ、ありました。東京と大阪みたいな【地理的】な差。知っている人がいる場所と知らない人がいる場所が確かに存在します。しかしそれを利用した取引は、だからこそインサイダー取引で罰せられるのか・・・。

 うむ・・・

こういう法に触れる裏情報は別として、一分一秒刻みで新しい材料を探す=東京大阪の違いみたいなのを眼を皿にしてパソコンの前に座りっぱなしで探す=デイトレーダーの毎日(ちょっと単純すぎる=ですね、デイトレーダーの方すいません(^^;;;)ことは、市場の中のもやもやした情報をどんどんクリアにしていくという作用がありそうに思えます。

場が開けてから大引けまで微細には株は上下するわけですけど、朝一回と夕方一回しか株をチェックしていない人は、その間に飛び交った情報を知らないわけですよね。

朝、大阪が3000円で東京も3000円。

別に何もアクション起こさなくてもいいやと思っていたけれど、実はその間に、大阪でも東京でも乱高下があって、夕方見たときは朝と同じでもその間にものすごい裁定取引が行われていた。

そしてこの裁定取引とは、著者によれば、マーケットが合理的に動いていることと、十分な裁定が行われていることは同義なんだから、デイトレーダーは市場経済の最も模範的な合理的な行動である裁定取引によって、市場を適正価格にグングン近づける努力を一日中し続けたということになりますよね。

同じ3000円でも朝の3000円よりも夕方の3000円のほうがより一層資本主義経済に鍛え上げられた価格ということになります(よね)。

だから、適正価格を浮き彫りにしていくデイトレーダーこそは市場をかき回す人どころか、資本主義経済の模範的な経済人ということにならないでしょうか・・・。少なくとも密談のような取締役会で怪しげな決議をしたり、料亭で株価についての秘密の会合を持ったりする悪徳役員(三流経済小説の読み過ぎか)よりもすごい。


 おっと、お得意のゆっきーの暴走が始まりました。

 もちろん著者はここまで言ってません。

 次回落ち着いてまたこの問題を追求するとします!