2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

【文学逍遥】猪瀬直樹『ペルソナ三島由紀夫伝』文藝春秋

三人三様のニヒリストたち 原敬暗殺は実はあるルートから平岡定太郎の耳入っていた。親分にそれを伝えに行ったが、原敬は話しだけ聞いてあまり真剣にはとらなかったようである。 果たしてその定太郎の情報は的中した。原は帰らぬ人となって、原の子飼いだっ…

【文学逍遥】猪瀬直樹『ペルソナ三島由紀夫伝』文藝春秋

原敬が任命した祖父平岡定太郎樺太庁長官と長官以後 どんな歴史にもその歴史の主役と脇役がいる。 もちろん主役と脇役とはあくまでもある種の無責任な後世の史観によって分類されたものだ。ここでは、主役とは日本をグランドデザインしていった岸信介を官僚…

【文学逍遥】猪瀬直樹『ペルソナ三島由紀夫伝』文藝春秋

三島由紀夫の戦後 1940年体制を官僚支配、大蔵省による銀行統制を軸に考察するこのブログのシリーズで、避けて通れない人物が一人いる。嘘です(ーー)このあたりの交差点であたしの方から交通事故に遭いたい人物です。 日米安保闘争をめぐって、三島由紀夫V…

野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』東洋経済

石油ショック乗り越えでは終身雇用も大事だったが それ以上に生産性の問題が本質的だった ズバリ!本書から引用してみましょう!「西ドイツでも日本でも、戦災によって戦前からの工場の多くが失われた。しかしそのために、新しい工場を作ることができた。技…

W.オーウチ『セオリーZ〜日本に学び、日本を超える』CBS・ソニー出版など

経済学 VS 経営学 ? 経済学が動揺している間に、経営学の方では毀誉褒貶激しい「日本的経営論」が気を吐いていました。 日本的経営はスバラシイ!昔からよくあるように、こうした指摘は日本人からではなく外国人がし始めて広まっていったようです。 「多く…

野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』東洋経済

純粋な市場経済と言えない国の方がなぜ成功したか〜経済学の試練の時代 さて、日本とドイツがかなり戦後経済体制が共通していることがわかりました。そしてそれを支える人材が戦前のエリート中心であることも確認しました。 そして両国とも戦後の混乱期を経…

【閑話休題】幻が幻で亡くなった日々

ここでちょっと寄り道をして、少し前に集中的に取り上げた『幻の1940年計画』アスペクト刊 にもどってみよう。1940年代には実現されかかっていた下記の4つの計画。これは1940年体制がひかれることになった戦時経済の中で消えさってしまったのだが、この時の…

野口悠紀雄『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』東洋経済

日本と独はなぜか似ている ヒトラーの経済政策が日本やアメリカよりも成功したケインズ理論の適用である、と言い切ってしまっている『ヒトラーとケインズ』に首肯する前に、独と日本の共通点をもう少し探求してみましょう!上記の本からまとめてみます。・後…

武田知弘『ヒトラーとケインズ』祥伝社新書

よい公共投資と悪い公共投資がある? では、前回ヒトラーの公共政策の簡単な復習をしましたので、今回さらにそれを見ていきます。筆者はここでケインズの重要な概念を持ち出します。「ケインズの失業対策理論には「乗数効果」というものがある。政府が投資を…

武田知弘『ヒトラーとケインズ』祥伝社新書

計画経済の世紀表題に書きましたように、20世紀はある意味で、計画経済の世紀だと言えると思います。その背後にはソビエト連邦の誕生ということだけでなく、経済活動そのものには大規模な国家レベルの計画性がどうしても必要なんじゃないかという、資本主義…

小林英夫 米倉誠一郎 岡崎哲二 NHK取材班 『「日本株式会社」の昭和史―官僚支配の構造』創元社

他人の空似じゃなかった!? 今回はその計画経済の系譜を駆け足でまず俯瞰してみます。「世界恐慌が始まる前年の1928年、ソ連では世界初の計画経済である第一次五ヶ年計画が始まった。この計画でソ連は、農業国から工業国への急速な産業構造の転換を図っ…

小林英夫 米倉誠一郎 岡崎哲二 NHK取材班 『「日本株式会社」の昭和史―官僚支配の構造』創元社

計画経済の系譜学前回戦時経済体制の骨組みとして長期的統制計画経済を可能とする間接金融の確立を探りつつ下記の流れを整理しました。所有と経営の分離⇒革新官僚⇒大政翼賛会⇒間接金融⇒軍需省 この連載エッセイでは、思いもかけずたくさんの恐れ多いレベルの…

野口悠紀雄『1940年体制 ―さらば戦時経済』東洋経済新報社

経営は国家にやらせろ!今回は最後の方で少々ゆっきー史観を入れてみます。 前回、日本的企業活動を支える間接金融が資本家の論理を抑える形で機能し始めたことを整理しました。 今回は同じく間接金融の誕生を、官僚がそれをどう整備していったのかを切り口…

野口悠紀雄『1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済』東洋経済新報社

1940年以前の日本企業はまるでアメリカ企業だった?!さて、野口先生のご本は理論的で歴史的な考証も緻密なので、ゆっきーのぶっちゃけ方式で行きまーす。 現代の日本企業は、直接株の発行や債権の発行をして資金を集めることが増えたとしても、依然として間…

野口悠紀雄『1940年体制 ―さらば戦時経済』東洋経済新報社

我らが出生の秘密 「しかし、もし、われわれの出生が別の時であり、われわれの親が、別人であるとすれば、どうであろう」 名著『1940年体制』第1章には、こんな文学的な一節があります。不気味で根源的な問い掛けです。文はこう続きます。「われわれは…

指南役『幻の1940年計画―太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した』アスペクト

ダメ押し(ノ゚ο゚)ノ新幹線は実は1940年に計画されていた?!うーむ。 なんだかここまで来ると、1940年から歴史が止まってしまって戦後の高度経済成長期まで完全な空白だったようにも思えてきてしまう。 その列車は車輪が直径2メートル30センチ。最高…

指南役『幻の1940年計画―太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した』アスペクト

テレビ放送開始は本当は1940年からだった?!うーむ(@@) この本面白いな〜 時は1936年8月。ベルリン・オリンピックが開催されました。「当時隆盛を誇っていたアドルフ・ヒトラー総統は、当初オリンピックを「ユダヤ人の祭典」であるとして開催…

指南役『幻の1940年計画―太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した』アスペクト

1940年はバブルの集大成?幻の東京オリンピックだけじゃない! 1940年=皇紀二千六百年日本万国博覧会は前売り券まで発売されてた!? ウィキペディアにとんでもない情報があるのです!知っている人は知っているのでしょうか。あたしは、この本に載…

指南役『幻の1940年計画―太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した』アスペクト

戦後の東京オリンピックは実は二度目であった それではその我が国の戦後を支配していると言われる1940年とは一体どんな時代で、どんな政策が行われたのかをタイムスリップして確認してみよう(^^) まず、この本の筆者によると1940年を迎える1930…

山崎裕司『談合は本当に悪いのか』洋泉社

日本は市場主義の国だとダレが言った?! もしかすると「談合は本当に悪いのか」という題名に不快感を持つ人がいるかも。というかいると思います。 ですのであらかじめ筆者のためにありそうな誤解を解いておきますと、この本は「談合はやっぱり正しいのだ!…

池井戸潤『鉄の骨』講談社

談合を考えるにあたって、ここはゆっきーらしく(^^)補助線を引いてみます。 『鉄の骨』という本はこの作品で直木賞の候補にもなった池井戸潤さんの本です。三菱銀行出身の人だけあって、銀行から見た中堅ゼネコンの記述にはなかなかリアルで読ませるもの…

勝谷誠彦『偽装国家―日本を覆う利権談合共産主義』扶桑社新書

前回利権を軸にこの本を読み進みたいと書きました。ブログに書く前にその視点で本書とその続編の二冊を再読したのですが、意外にもその思いつきはなかなか使えそうです。せっかくなのでこれを簡単な公式にしてみました。それが以下です(^^)。『偽装国家…

勝谷誠彦『偽装国家―日本を覆う利権談合共産主義』扶桑社新書

よくまあこんなに偽装が・・・ 我が国日本とは一体!と嘆くよりもなんというか、笑えてきてしまう軽妙な筆者の文章を引用してみましょう。 「高校で「単位偽装」して大学に入り、買った車は三菱で「リコール偽装」。ケーキを買えば不二家の「期限切れ偽装」…

勝谷誠彦『偽装国家―日本を覆う利権談合共産主義』扶桑社新書

地下経済についてはたくさんのコメント、再コメントをいただきとても刺激を受けました。ちなみにこんなに盛り上げていただいたのは小説ブログではついぞありませんで、小説よりもエッセイのほうが向いてるかなと一瞬考えこみました(笑)。ちなみに小説は短…

門倉貴史『日本の地下経済―脱税・賄賂・売春・麻薬 』講談社プラスアルファ新書

いかにもアンダーグラウンドな題名の本ですが、著者は浜銀(横浜銀行)総合研究所調査部研究員として主にマクロ経済の分析を担当するシンクタンクの人です。 冒頭に澁澤龍彦訳のマルキ・ド・サド『悪徳の栄え』のサド侯爵夫人の独白が引用してあるのですが、…