2011-01-01から1年間の記事一覧

ヴェニスの商人の法人論9

「ねえ、堀木くん」 堀木は放心状態でソファに座っていた。 シャイロック2.0はというと、忙しく国際電話をしている。 デーブスペクターの怪しい流暢な日本語ではなく、抑揚は抑え気味だがリズミカルでテンポが恐ろしく早い英語だ。 ボストンの上流階級の社…

ヴェニスの商人の法人論8

「乾杯」 シャイロック2.0はこの上なく上機嫌で杯をあげた。「それでは、君たちに資金調達の極意を教えよう。我が祖先、シェイクスピアのヴェニスの商人のモデルにもなった本家本元シャイロックが一子相伝で伝えてきたものだ。私はくどいようだが仲間にし…

ヴェニスの商人の法人論7

「へえ、これはまた外資系って発想ですね」 堀木とユキコ、そして関西弁をしゃべる怪しいデーブ・スペクターシャイロック2.0の三人は、地下鉄銀座線虎ノ門駅の地上出口を抜けると、虎の門病院を左手に見つつ、たわいもない世間話をしながら徒歩で移動し、…

ヴェニスの商人の法人論6

閑話休題の閑話休題(ワルノリ小説) 「堀木くん、ベンチャー企業の社長さんになったんだね」 ユキコは10年以上前の中学校の教室での堀木を思い出しながら言った。「ああ、ベンチャーいうても資金も何もあらへんし、大嫌いなおやじの工場の事務所の一室借り…

ヴェニスの商人の法人論5

「なあ、君、君のそのプランは他社がやらないうちに早くやるべきだよ。君のような才能は株式公開で早く世にでないと社会的損失とさえ言えると私は考えるね」 シャイロック2.0は言葉巧みに青年を誘惑します。 青年は実は心の奥底では、自分のこのプランは…

ヴェニスの商人の法人論4

資本主義の宿命としての未来への飛ばしの幕開け それでは、シャイロック2.0が活躍する現代のヴェニスの商人の始まりでーす(^^)/。 舞台は東京渋谷 ITバブル盛んなりし頃の渋谷です。 当時渋谷では、シリコンバレーをもじって、渋い(ビター)、谷(バレー…

ヴェニスの商人の法人論3

さて、現代金融帝国資本主義の世界に再び降臨したシャイロックをここでは、そのバージョンアップ版としてシャイロック2.0と名づけましょう(笑)。 そうです。 ピチューがピカチューに進化したように、学校の不良が自衛隊に就職して各種軍事教練を積み不良グ…

ヴェニスの商人の法人論2

それでは、おとめのエッセイを続けます(^^) さて、ミリンダ王たちの楽しい問答があった北インドから、今度は舞台をイタリアへ移します。 そうです、表題のヴェニスです。 なお、本日引用しますのは岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』ちくま学芸文庫 および…

ヴェニスの商人の法人論1

堅い話が続きましたので、今回は閑話休題でひさびさの「おとめのエッセイ」でーす。 古来哲学者を魅了してきた『ミリンダ王の問』。 紀元前に世紀後半に北方インドを支配したギリシャ系の王メナンドロス(ミリンダ王)と仏教の高僧ナーガセーナが実際に交わ…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

会社のモノとヒトとの二重性をいったんバラバラにしてみる 其の一 会社をモノにしてしまう編 それではまいりましょう(^^)/「これからわたしは、会社という制度のなかに、会社という法人を純粋にモノにする仕組みと、会社という法人を純粋にヒトにする仕組み…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

ヒト的な責任かモノ的な責任か分類してみよう 書籍の絵が、この間までの岩井克人『会社はこれからどうなるか』平凡社ライブラリーに変わってます。文章的には今回はこちらを使って、前回の責任の三分類を検討したいと思います。 ます、それぞれの責任を、こ…

奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社

約束事=フィクションとしての有限責任〜その範囲について これまで、有限責任はフィクションだと書いてきましたが、ここでは世の中の決まりごとや社会通念といった、人間によって創りだされた制度(=フィクション)によって鏡にように映し出された瞬間に生…

奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社

株式会社のメリットと意義の再確認、そしてさらに問題点のあぶり出し 論拠をまだ明確にしないまま、雰囲気だけ不気味な株式持ち合いの法人資本主義を見てみました。 そこで今回は、アダム・スミス級の大物で株式会社賛成論を展開するJ・S・ミルの引用から参…

奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社

責任の分業というフィクションの実態〜人造人間はなんと7割に達している!? 隣の人造人間・・・。 まずは奥村氏の文章から引用します。「外国の会社と比べて日本の会社の特徴はなにかと聞かれれば、終身雇用や年功序列賃金などと並んで、すぐに株式の相互…

奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社

直木賞作家は直木三十五の作品を読破しているのか? 経済学者はアダム・スミスを・・・ 会社形態というのはいろいろありますが、私みたいな素朴な素人は合名会社や合資会社よりも有限会社、一番偉いのが株式会社だと思ってしまう。 これはもっとぶっちゃけ、…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

そもそもなぜ法人は生まれてきたの? というわけで、とってもややこしい人造人間社会が、どうやらたまたまではなくて、必然的な理由で生まれてきたらしい、という予感がして参りました。 素朴な疑問としては、そういうめんどいことをやめにして、結局会社だ…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

人造人間は法人実在説の夢をみるか? さて、では先へ参ります(^^)/ 前回のおさらいですが、株主という存在は、ただ単に会社の重要な行為に関する議決権を有しているに過ぎない、これを別サイドから言い換えれば、会社資産の所有者は人間様ではなくて会社とい…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

”株主”ってどういう意味?そりゃあ、株の持ち主さ! それでは、スーパーマーケットチェーンのオーナーという大富豪は、お腹が減った時自分のスーパーの食べ物を勝手に食べること能わず!っていうのはどういう理屈で論証されるのでしょうか。 ズバリ! 「株主…

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社ライブラリー

会社は最初は、個人の商店であるような場合が多いと思います。もちろん、最初から大きな資本が準備され、いきなり資本金何十億という会社が大きな会社の関連会社として設立されるというケースもたくさんありますが、ライブドアは少なくとも東大時代に堀江貴…

相原博之『キャラ化するニッポン 』講談社現代新書

直球が続いたので、ちょっとカーブでも投げてみようと・・・宮内亮治元CFOが高校球児だったからというわけではないですが、変化をつけてみようかと・・・ 序章で著者は次のように書いています。「最近の若者達は、本来の自分の内面とは別の、表層的な「キャ…

宮内亮治『虚構 堀江と私とライブドア』講談社

ライブドアの新しいニュースですね。□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 「「ライブドア」の社名消滅 来年1月に「データホテル」に変更」 msn産経ニュース11/7 http://goo.gl/o4fne □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 韓国ポータルサイト最…

ホリエモン登場の背景3「最後の恩恵」か「つまずいた出発」か

ライブドア最高財務責任者の胸中 今回は、ライブドアが上場企業として登場したあたりに的を絞って背景を見てみようと思います。 元最高財務責任者の宮内亮治さんの著書『虚構 堀江と私とライブドア』講談社 が一番間近でそういう雰囲気を感じた人の肉声が溢…

ホリエモン登場の背景2〜完全無視する完全勝利は可能か?

源義経、ねずみ小僧、東条英機、総会屋、任侠の徒、小沢一郎、ルパン三世 (ーー) ・・・○○えもん?「敵対的買収という危機感のない経営者にバブルの戦後処理はできない!」 前回こう書きましたが、こうした正論は時に爆発的に受け入れられるときがあると思…

ホリエモン登場の背景1〜株の持ち合いによる澱み

バブルが崩壊して日本経済は焼け野原、そしてもっと悪いことには・・・ それでは、ITバブルの申し子ホリエモン登場前夜である(ITじゃない方の)「80年代バブル崩壊期」の時代背景などを中心に本書を読んでみます。「バブルの崩壊時期になると、大企業の様…

佐々木俊尚『ライブドア資本論』日本評論社

ホリエモンとは誰だったのか さて、本山美彦さんと野口悠紀雄さんの金融論を比較する前に、すこし具体的なイメージを補助線としてひいておきたいと思います。 ホリエモンさんでーす(^^)。 裁判も結審し、みそぎ中の堀江氏をめぐっては、これまで数えきれ…

本山美彦『格付け洗脳とアメリカ支配の終わり』ビジネス社

多少この面白い本の紹介ができたと思うので、また動画で一休み(^^)。テレビドラマと映画で有名になりました『ハゲタカ』の音楽に乗せてどうぞ!しかし・・・小説版の鷲津さんの大ファンであったゆっきーは映像版にどうも違和感感じるのですが・・・大森…

本山美彦『格付け洗脳とアメリカ支配の終わり』ビジネス社

それではゆっきーの格調低い男性論を中断して、格調高い経済学の方のお話に移ります(^^)。「金融博徒たちはリスクの悪質な誤用を意識的に行なっている。例えば、破産が確実な低所得の人に、目も眩むような高い利子で強引に金を貸し付け、貸付を受けた人…

本山美彦『格付け洗脳とアメリカ支配の終わり』ビジネス社

リスク・テイキングってカッコいいのかい? さて、世の中リスクテイクという言葉が、だれもやりたがらない難事を決然と男らしく黙ってしぶーく遂行するという本来の意味とは、まったく正反対の意味に間違って使われているよなあ・・・と思う人は私だけでしょ…

本山美彦『金融権力』岩波新書

もう一度1940年体制を考えてみる 野口悠紀雄さんの本で「1940年体制」をしばらく見てきましたが、小泉政権時代に行われた様々の金融改革はまさに、アメリカによる再度の1940年体制の打破っだのではないかな・・・と『金融権力』を読みながらそん…

本山美彦『金融権力』岩波新書

格付け会社に格付けしてもらわなくても・・・ さて、ラップで遊んで『金融権力』に戻ります(^^)。 格付け会社の権力性について考えようとしてたのですが、例えば企業情報を公開する義務のない会社、未上場の会社はそうした格付け圧力に直接さらされることは…