奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社

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責任の分業というフィクションの実態〜人造人間はなんと7割に達している!?


 隣の人造人間・・・。

 まずは奥村氏の文章から引用します。

「外国の会社と比べて日本の会社の特徴はなにかと聞かれれば、終身雇用や年功序列賃金などと並んで、すぐに株式の相互持ち合いがあげられるだろう。会社が会社の株式を持つということはアメリカやイギリスにもあるし、ドイツではもっと多い。ところが日本では会社同士による株式相互持ち合いが大規模に行われれおり、それが日本の株式上場会社の最大の特徴となっている」

                    奥村宏『無責任資本主義』東洋経済新報社P110


 ここで、もういちど岩井克人氏の『会社はこれからどうなるのか』に出てきたエッシャーのだまし絵を再掲してみます。

 これが、その持ち株会社です。

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このエッシャーの絵が不気味な現実を生み出す極端な例として、資本金100億円の会社を一瞬で誕生させる思考実験をしてみたいのですが、これはまったくいとも簡単で、最初に左手と右手の会社がまずはそれぞれ1円で株式会社を設立します。

 1円でも様々な資本政策を執行できる立派な株式会社です。さらに左の株式会社は右手の会社に対して100億円の増資の割り当てを行います。それと同時に右手の会社も左手の会社に100億円の増資割り当てを行う。

もうお気づきのように、その資金は相殺すればいいのです。

 すると、左手の会社は右手の会社に100億円分支配されますが、同時に右手の会社も100億円分支配すことができ、相手に好き勝手させないというパワーポリティクスの観点からのみみた企業統治の構造においては、実質上の経営の独立を保ったまま左手の会社も右手の会社も自己の資本金を100億円増資したことになります。

 手続き上銀行への資金の保管証明に必要なゲンナマのプールの間だけ現金が用意できていれば、このトリックで巨大企業を次々と(理論上は)誕生させることができます。最初のお金は身内の銀行があればそこから借りればいいし、身内に地下経済を牛耳っている組織があれば一生奴隷にされちゃうと思いますけど、そこからお金を出してもらうということで、こんな悪いこと考える人にとって最初の資金はどうにでもなる。

 現在では株券の発行すら行われませんので、電子的な証拠を残した上で、増資された資本金が立派に有価証券報告書に記載されることになり、紙切れの交換すら行われずに空洞化された増資が実行されてしまいます。

 現実問題としては、資本充実の義務違反とかいろいろな実行上の制約があり、上記のようなトリックはそのままですとどこかで違法になりますが、違法ならぬ脱法行為として上記のスキームは応用的に思考の枠組みとして使おうと思えばいろいろなところに使えてしまいます。


 さて、ではこの法人が法人を支配しあうという、まさに人造人間が人造人間の会社を相互に支配する関係は、日本にどれくらいあるのでしょうか。それが0.1%、千人に一人くらいだったら、気持ち悪いけど、まあしょうがないか・・・なのですが・・・

「日本の上場企業では、まず法人による株式所有が総発行株式の七割近くに達している」
奥村宏『無責任資本主義』P110

しかも、人造人間社会と聞いてそれが不気味なニュアンスを帯びるのは、ロボット社会とは違っていて、見かけ上、人造人間は人間に見えてしまって普段意識していないことです。

 寄生獣という漫画を読んだ方は、その不気味さがお分かりいただけると思いますが、まあ、こんな感じです。

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 漫画は名作ですのでぜひぜひ一度お手にとることをお勧めします(^^)が、この漫画にあるように実際には自分の隣人、家族が人間じゃなくて他の生命体だった!みたいなのは、まあ不気味で怖いわけです。

 なんでかというと、そういう人がどれくらい普通の顔して紛れているか分からないから。

 これと同じことが、上記の持ち株会社に言えます。

「日本の上場会社の発行株式のうちどれだけが相互持ち合いになっているかを量的に図るのは難しい。というのは、A⇔Bという直接的な持ち合いなら簡単だが、A⇒B⇒C・・・⇒Aという間接的な持ち合いになると、これを正確に捉えることは困難だからだ。というのも、上場会社の発行株式のうち十大大株主の所有分は有価証券報告書に記載されているが、十一位以下は記載されていない。そこで今度は各会社の所有株式について附属明細表から調べていく以外にはないが、銀行などでは個別銘柄の株数が記載されていない。」
奥村宏『無責任資本主義』P111


別の本で奥村氏がどうして7割としたのかその推定式をみたことがありますが、厳密に正確な実態はそういうわけで分からないです。しかし日本を支配しているのは上記の構造であり、それは少なくとも0.1%とかではない・・・というのは覆らないので、7割ということの正確性は今はとりあえずおいときます。それと、この記事で依拠している奥村氏の本が1998年発行なので、法的な事実なども全てその後改正されている可能性はあることをお断りしておきます。


 さて、どーしたもんだろーか(ーー)。
 どうやって人造人間と仲良くしていけばいいのだろー。
 こわいよぅ

 つづく・・・

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