ヴェニスの商人の法人論3

 さて、現代金融帝国資本主義の世界に再び降臨したシャイロックをここでは、そのバージョンアップ版としてシャイロック2.0と名づけましょう(笑)。

 そうです。

 ピチューがピカチューに進化したように、学校の不良が自衛隊に就職して各種軍事教練を積み不良グループのボスに返り咲くように、そして、ラーメン屋さんがMBAを取得して再び個人商店のチャンピオンとして・・・みなさんそれぞれがそれぞれにパワーアップするように、シャイロック現代社会においてV2.0となりまして通り名も変わりました。

 今度のシャイロックの通名はもうご想像の通り・・・

ズバリ! $ゆっきーのエッセイブログ

会社乗っ取り屋です!

 それでは本編の方の参考書を参照してみます。



岩井克人氏による会社乗っ取り屋の仕事の定義

会社乗っ取り屋の仕事の第一歩は、株式価値が資産価値を大幅に下回っている会社を見つけ出すことにあります。(中略、その後)首尾よく50%以上の株を自分の手におさめることができると、会社乗っ取り屋は支配株主となり、会社の財産を自由に処分できるようになるわけです。買収資金をなるべく早く回収したいときは、会社を株式市場から引き上げ、その資産をすべて売り払ってしまいます。   岩井克人『会社はこれからどうなるのか』P157



うわあ(><)

 やっぱりそうきますか・・・それではやっぱり・・・



だが、その場合には後に議論するように、組織としての会社のなかに蓄えられてきた無形の資産の殆どを失ってしまうことになります。それゆえ会社乗っ取り屋は、通常は、現行の経営陣を追い出して、より効率的な経営をおこなう実績を持つ新たな経営陣を送り込み、会社の再建をはかります。そして再建策が成功して、会社の業績が好転し始め、株価も会社資産の潜在的な価値を反映するようになった時を見計らって手持ちの株式を売ることにするのです  同書P158



ううむう・・・。

 ピチューがピカチューに学校の不良が軍事教練経験者に、そして、ラーメン屋さんがMBAホルダーになっただけでなく・・・

 太宰風にに言うならば「彼は昔の彼ならず」(太宰がお好きな方はクリックで青空文庫へ)となるのは、アントーニオが手塩にかけて育てた会社もそうなのですね・・・



 ああ、あの懐かしきあどけないピチューは、厚顔の不良少年は、下町のヒゲのラーメンやさんは・・・そしてアントーニオの小さくてもぴりりと光るあの町工場は・・・もはや永遠に過去の世界なのでしょうか。人造人間は自ら人造人間であることに飽きたらず、吸血鬼ドラキュラのように獲物を次々と吸血鬼にしてしまわないと気が済まないのでしょうか!?


 「僕は何も変わってないさ」

 例えばかつての恋人の、その一言がかえって切ないのは、それが人間の、事物の同一性とは何かという問いを仄かに詩的に、しかし涙も追いつけないほど冷厳に、そのかけがえのない過去を知るものに突きつけるからでありましょう。

人ごみに流されて人はかわれど人はそれを自らの肉眼では認識し得ない。



 ・・・ということで、次回は人間存在、ヒトとしての法人の自我同一性とは何かという哲学的な問題に斬り込んでいきたいと思います。

 この時に宿題にしてあります「フィクションとしての有限責任」を存立せしめる前提要件としての行為主体の同一性にも若干言及できると思います。




みんなみんな昔ながらの彼であって、
その日その日の風の工合いで少しばかり色あいが変って見えるだけのことだ。

 おい。見給え。青扇の御散歩である。あの紙凧のあがっている空地だ。
横縞のどてらを着て、ゆっくりゆっくり歩いている。

なぜ、君はそうとめどもなく笑うのだ。

そうかい。似ているというのか。

――よし。それなら君に聞こうよ。空を見あげたり肩をゆすったりうなだれたり木の葉をちぎりとったりしながらのろのろさまよい歩いているあの男と、それから、ここにいる僕と、ちがったところが、一点でも、あるか。

太宰治「彼は昔の彼ならず」