【ライフハック本の特徴】2シリコンバレー精神親和性その10 「過」露出と「過」保護のジレンマ

 切り口を変えて、「過」露出と「過」保護のジレンマについて考えてみます。


個人情報「過」保護が日本を破壊する [ソフトバンク新書]/ソフトバンククリエイティブ

 行き過ぎた個人情報保護に警鐘を鳴らす一書。
国際的な潮流に逆行する法律の施行が、個人情報「過」保護を生み、ビジネスの効率や日本社会の美しい特質を蝕んでいる。このままでは、日本は息の根を止められてしまう。現行の個人情報保護法の恐るべき正体を解き明かし、合法的対抗を呼びかける警世の一書。

 個人情報保護法施行以来、仕事も私生活もどこか息苦しくギスギスしている。何かが狂っている。そう感じているあなたの感性は正しい。この法律は、旧態依然の基準に従い、世界の潮流に逆行する個人情報「過」保護法なのだ。正当な経済活動や円満な社会生活が蝕まれ、今、日本社会は息の根を止められようとしている。現行法が抱える数多くの問題点を指摘し、合法的な対抗手段を伝授する反骨の書。
Amazonサイト紹介文より




 個人情報の取り扱いに慎重になってなりすぎることはない。こんにち誰もがそう思いながら、ふとしたきっかけで、ちょっと神経質になりすぎなんじゃないかなあ…と思う瞬間。

 ありませんか?(^^)?

 本書ではこんな例が載せられていました。


 

不便な世の中

 さまざまな組織や団体の名簿類が今、どんどん廃止されつつある。

 名前や住所・電話番号がどこから漏れて不正使用されるか分からない。

 そんな疑心暗鬼が、個人情報の提供に二の足を踏ませている。

 おかげで、同じ組織のメンバー間で、年賀状や暑中見舞いを出すのにも不都合が生じている
 2005年9月に行われた国勢調査では、従来にも増して国民は非協力的になった。
 多くの人が調査票の記入・提出を拒否し、調査員とのトラブルが絶えなかった。

 調査方法に対する見直し論議が盛んに行われる中、東京都杉並区がO六年五月、「国民の理解は著しく低下している」として、総務省に対して調査自体の廃止の要望書を提出するような事態まで現出している。

 そのほか、後述するがJR福知山線の大事故のようなときも、肉親の安否確認が容易にはできなくなっている。

 行政は個人情報保護をいい訳にして情報開示を拒み、匿名主義に陥っている。

 企業も、営業マンのノートパソコンから顧客情報が消えてなくなり、営業力はガタ落ちだ。

 グループ旅行では、かつては参加者同士早く仲良くなってもらおうと添乗員が気を使って、お互いできるだけ詳しく自己紹介をするよう促したものだ。

 ところが最近は、「名前と出身地だけで結構です」などというようになった。

 それでも自己紹介があればいいほうだ。

 某バス・ツアーでは、個人情報保護の観点から自己紹介は一切なしで、どこの誰と一緒に旅をしたのかも分からないままツアーが終わってしまったという。



 我々日本人は何事も極端なところがなきにしもあらずですが、上記の例で営業マンの方には頑張ってもらうとしても(笑)、バスツアーの例は何となく寂しい感じもしますよね…。


 しかし一方で、日本人はソーシャルメディアが大好きです。いえ、日本人だけじゃありません。

 ウェルズさんの「世界脳」構想ですが、世界を構成する我々の脳みそを持ち寄り、一つの文化資産、インフラとしてそれを活用していこうという発想は、今日のソーシャルネットワーク(SNS)をベースにした集合知の理念だとも言えるでしょう。
 これは1930年代に構想されたウェルズさんの構想のひとつの実現だと言えるかもしれません。

 フェイスブックはおよそ9億人の脳みそが接続されています。そして創業者ザッカーパークの強い理念によって実名主義が抜かれていますので、参加する個人は実名はもちろんのこと学歴や会社名、趣味、既婚かどうか、信条、宗教などを積極的に登録しています。

 一方で<個人情報「過」保護>の状態がありながら、もう一方では<個人情報「過」露出>とも言える状況が並存しているわけです。




 これはいったいどうしたことでしょう?




 仲良くなるためにはある程度自分を晒さないと距離が縮まらない。しかし何でも晒したからといってすぐさま距離が埋まるわけでもありません。信用できるまでは晒したくないし・・・。

 このジレンマが私たちを<個人情報「過」露出>に走らせたり、<個人情報「過」保護>に揺り戻したりするのだということはなんとなく言えそうな気が…。


 また、記憶と記録のダイナミズムは、このジレンマの解決の方向性を示唆してくれるのでしょうか。




 次回は、このジレンマのメカニズムをもう少し詳しくみてみたいと思います。
(o^—^)ノ