小幡績『すべての経済はバブルに通じる』光文社新書

道徳的な投資家は企業の崇高なサポーターか?
                     どうもそうじゃなさそうで

$ゆっきーのエッセイブログ

 それでは、同じ著者のこれまでとは別の著書で「すべての経済はバブルに通じる」という命題を検討したいと思います。もしそうならば、株式市場をおもちゃにしてると非難されがちな投機的活動は、実は資本主義的な公道の王道であることになっちゃいそうで、世界観の一変までいかなくても経済観はかなりかわりそうです。

 まずは、著者の明快な文章から引用してみます。

ねずみ講において、出資金が増えるメカニズムは単純で、次に入会した人の出資金が回ってくるだけのことです。つまり、新しい人が入ってこないと困るのです。しかし、考えてみると、株式市場もある意味同じです。ソニー株に投資した人にとっては値上がりすることが重要で、経営がうまくいって収益が伸びるのはいい情報ですが、直接には関係がありません。収益が伸びても、株式市場が悲観一色なら、間違いなく株価は下がって行きます。これでは困ります。全ては、買った値段より高く売れるかどうかにかかっています。

                         『すべての経済はバブルに通じる』p6

 典型的なゼロサムゲームですか・・・。なんとも、はや・・・( ̄ー ̄;

 しかし、良識のある投資家を自認するソニー株のホルダーは笑うでしょう。「おれはそういう輩とは違うよ」と。

 しかししかし、それこそ自己満足なんじゃないかという再反論的な見方もあるようです。


「本当の投資とは、ゼロサムゲームでなく、新たなものを生み出し、付加価値をもたらすものだという議論は、起業して会社を始めるときのことを考えればわかります。(中略)アイディアもよく、志を同じくして一緒に人生を花屋(中略に花屋を起業しようとした例:ゆっきー注釈)にかけてくれるビジネスパートナーも見つかったとします。しかし、さあ頑張るぞ、と思ってもビジネスは動きません。(中略)そうです。お金が無いと何も出来ないのです。
 そこで、お金を出してくれる人を探します。(中略)可能性があるのは、すでにビジネスで成功して大金持ちになっている人か、いわゆるベンチャーキャピタルというビジネスの初期段階に投資する専門の投資会社(ファンド)になるでしょう。
 これこそ本当の投資です。

                            『ネット株の心理学』p252-253

 ふむ・・・。なんとなく言わんとしていることが分かってきたような・・・と読み進めると果たして・・・。

「この花屋ビジネスとの対比で、上場企業への株式投資を考えてみましょう。たとえば、トヨタの株を1000株、6620円で買ったとします。662万円もの投資出るからかなりの額です。さて、この投資によって何か付加価値は生まれたでしょうか。残念ながら、あなたがトヨタに投資しようがしまいが、トヨタには何の影響もないのです。トヨタが新たに資金を入手するわけでもなく、ビジネスに変化が出るわけでもありません」

                            『ネット株の心理学』p252-253

 企業にとってたかが662万円だからということではなく(ある意味もっとぐさっと来るのかもしれませんが)、p254には、ただ単に株式の所有権が変わっただけで、ゼロサムゲームに他ならないとありまして、・・・まあ、言われて見れば確かにそういうことのようです。

 実態は投機家と同じくゼロサムゲームをやっているだけ・・・。

 なら、道徳的な投資家とは、行儀のいい投機家(しかしながら正直な投機家仲間に対して口うるさい投機家か)ということにならないだろうか・・・。


 だんだん身も蓋もない方向に行きそうなので、一旦区切ります。


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